確定申告書にはいろいろな情報があります。
細かい部分はともかく、ここの数字は見ておきましょう。
戻りが多いとか少ないとかは、たいしたことではないです
「今年は昨年より還付額が多いぞ!」
「去年より収入減ったけど、今回の税金の支払い多いなぁ?」
確定申告をすると、こんな感想を持つ方、多いと思います。
年末調整のときもそうですが、還付額が多い少ないとかは、あまり関係ありません。
確定申告や年末調整はいわば精算業務。
単純に「払うべき税額」と「すでに払った税額」を比較して精算しているだけです。
足らなければ払う、払いすぎていたら戻る。
それだけです。
医療費を200万円払っていても、住宅ローン控除額が20万円でも、支払うべき所得税が1万円だったら、1万円以上戻ることはありません。
そこに一喜一憂するのではなく、自分は税や社会保険料をどのくらい負担しているのか?
それを認識しておいた方が、いいと思います。
どのくらいの負担なの?
年収600万円のサラリーマンのAさん、41歳。
奥さんも同じように働いているので、配偶者控除等はなし、生命保険等はなし、なんて設定で見てみます。
普通であれば年末調整で終わりなんですが、今回は確定申告書の見方なので、確定申告をしてもらいます。
12月10日ぐらいに会社をやめたことにでもしておきましょう。
会社からは「年調未済」と書かれた源泉徴収票を受け取っています。
これをもとに、Aさんはe-taxで確定申告しました。
確定申告書で見ておきたいのは、次の数字です。
収入金額と㊺の金額
まず収入に対して所得税がいくらか?は知りたいところです。
申告書の第一表、向かって左側の収入金額。
Aさんの場合はサラリーマンなので、オの給与収入を見ます。
600万円でした。
税額は右側、㊺を見ます。
黄色く塗られているので、見つけやすいです。
Aさんの申告書を見ると、201,200円となっていました。
割り算してみると、所得税は収入の3.3%でした。
そんなに安いの?
いいえ、そこまで安くはありません。
所得税は「所得」に対してかかるので、所得を見ます。
税額を見た㊺欄の上の方に㉚の欄があります。
「課税される所得金額」とあり、Aさんの申告書には2,946,000円と入っていました。
㊺の201,200円のもとはこれです。
なので、これを㉚の2,946,000円で割ってみます。
6.8%ほどでした。
2,946,000円は所得税の税率表で見ると、10%の区分です。
でも累進税率の関係で、計算してみると、実際はそれより低めになります。
もちろん、収入によりますが、言うほど所得税は高くありません。
とく見ると、㉚の下、㉛欄に「㉚に対する税額」と書かれています。
この㉛の金額が税額なんじゃないの?
そうですね。
ここの税額を捉えたほうがいいのかもしれません。
㉛から㊺までに何がある?
では、㉛から㊺までに何があるのでしょうか?
㉜から㊷までは「税額控除」という、いわば減税措置の項目が並びます。
番号がたくさんありますが、住宅ローン控除、寄附金控除、災害減免の3つです。
住宅ローンは有名ですから説明するまでもなく。
寄付金控除(税額控除)は政党への寄附、公益法人等への寄付で税額控除を選んだ方です。
ちなみにふるさと納税は、ここには入りません。
災害は最近多くなっていますが、災害減免額に金額が入る方はそう多くはありません。
私もお客様の確定申告をしていて、今まで経験したことはありません。
㊹には震災復興にあてることで創設された、割増(+2.1%)税額の欄です。
これが良からぬ方向に行きそうなのは、報道のとおりです。
ごく簡単に見れば、
・住宅ローン控除
・寄付金の税額控除
を受けなければ、㉛と㊸は同じ金額になり、そこに+2.1%されて㊺が計算されます。
なので、私は㊺を見るほうがいいかな、と思います。
㉚欄に金額がない?方は
確定申告書の第一表では、一般的な課税方式(総合課税といいます)の計算をします。
所得が増えると税率が上がる、という計算です。
そのラインに乗らない課税方式(分離課税といいます)での所得があった方は、第三表という別の用紙をくっつけて、税金を計算します。
不動産を売却したり、株を売却したりした方などです。
この方は第一表の㉚欄に金額が入りません。
㉚の欄は第三表の「77欄」に行きます。
そして㉛の欄は「85欄」になります。
読み替えてください。
住民税と社会保険料
さて、㉚の課税される所得金額を見ましたので、令和5年分の住民税を計算してみましょう。
その㉚の数字の約10%が、住民税の年額です。
控除の計算が違うので、実際の住民税は少し高くなりますが、目安にはなります。
住民税は税率の区分がなく、一律10%です。
続いて社会保険料の負担はどうか?
再び確定申告書の左側。
さっき見た所得金額⑫欄のすぐ下。
⑬に社会保険料の金額が書いてあります。
Aさんは933,600円となっていました。
割り算すると、収入600万円に対しては、15.5%になります。
「うわっ、高っ!」
社会保険料は「所得」ではなく「収入」に対して計算されるので、社会保険料がいちばん多いです
どのくらいの負担か
年収600万円のAさんは、
・所得税が、201,200円
・住民税が、297,000円
・社会保険料が、933,600円
合計すると1,431,800円、収入に対する割合では23.8%です。
所得に対しても見たいところですが、計算根拠が違うので、スッキリしない答えになります。
・社会保険料は収入に対して計算
・所得税と住民税は、社会保険料を控除したあとで計算
だからです。
いずれにしても、それなりに負担しています。
還付金が多いとか少ないとかは、あまり重要ではありません。
収入(または所得)に対してどのくらいの負担をしているのかを、きちんと認識しておきましょう。
もし毎年確定申告をしているのであれば、ここの推移を意識しておきたいですね。
「細かいことがごちゃごちゃ書いてあって、見るのもいやや」
な書類ですが、だいたい重要なことやあまり知られたくないことは、小さな字で書いてあります。
でも、書いてあります。
知ることはできます。
ちゃんと見ておきたいところです。
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