「内部留保というお金はないんですが・・」と解説していましたが、それならこの絵は使っちゃいけないと思います。
誤解を生みます。
内部留保ってなに?
先日「企業の内部留保が500兆円を超えました」というニュースがありました。
「内部留保」ってなんでしょう?
ネットなどで調べてみると、
・内部留保とは、企業が生み出した利益から税金や配当、役員報酬などの社外流出分を差し引いたお金で、社内に蓄積されたものを指します。社内留保ともいいます。
・内部留保とはどのようなことを指し、どのように計算するのでしょうか。
簡単に言うと、個人にとっての貯金とほぼ同じです。
なんて書いてあったりします。(文字を赤くしたのは筆者)
こう書いてあると、冒頭の図のような誤った感覚を持つと思います。
「会社が溜め込んだお金」だと思う方からは、「もっと給料上げろ」とか、「内部留保に課税しろ」なんてトンチンカンな意見が出るわけです。
諸説さまざまは学者・有識者の方におまかせしますが、内部留保とは、ごく簡単に言えば、「今まで会社が積み上げてきた、利益のカタマリ」と表現できます。
「それはどこかに載ってるの?」
といわれれば、貸借対照表の「利益剰余金」になるでしょう。
利益剰余金ってなに?
「利益剰余金」と、またまた漢字だらけの難しそうな用語が出てきました。
利益剰余金は、会計用語です。
「今まで会社が積み上げてきた、利益のカタマリ」を表します。
例えば、設立して10年たった会社があったとします。
商売をして、毎期決算をして、毎期利益が100出ていたとします。
この利益はそのまま積み上がるわけではなく、ここから税金を払ったり、配当を払ったりします。
その結果、毎期60の利益が10年積み上がって、10年目の今、利益剰余金は600となります。
俗に「内部留保が600ある」といわれることになります。
ではその600は、会社に「お金」としてあるのでしょうか?
利益ってなに?
利益剰余金は、利益の積み上げと書きました。
では「利益」ってなんでしょう?
「利益」とは会計用語です。
収益から費用を引いた「差額」です。
計算上の、いわば「概念的なもの」です。
「会社の利益は1億円なのに、会社にはお金が1000万円しかない」
実際の現場ではよくある話です。
極端な例ですが、「会社の利益は1000万円なのに、会社にはお金が1億円ある」ことだってあります。
なぜかといえば、利益は単なる計算上の差額であり、実態はありません。
お金の出入りとは直接結びついていないからです。
「計算上の」損益と、「実際の」お金の動きはリンクしていません。
だから、利益=お金(の残高)とはならないのです。
そんな概念の積み上げである「利益剰余金」ですから、そこにお金はないのです。
資本金も同じ考え方です
利益(内部留保)と並んで誤解されている方が多いのが「資本金」。
会社の金庫に「資本金というお金がある」と思われている方もいます。
資本金は、会社で商売を始めるときの「元手(もとで)」、種銭です。
もし資本金を300万円用意して、それを金庫に大事にしまっていたら、1円も儲かりません。
資本金をもとに100万円で機械を買い、10万円で人を採用し、1個12万円の材料を2個買って・・・、商売を進めていきます。
資本金(としてのお金)は商売を始めた瞬間から、どんどん動いていきます。
機械や仕入れ、人件費や経費などを支払い、商品を売って・・というように。
私は資本金の説明をするときに、こう説明しています。
資本金は、会社が生まれたときの出生記録のようなものです。
あなたは、2400グラムで産まれたんですよっていう記録。
そこからどんどん成長していくわけです。私は未熟児でしたが、こんなに大きくなりました(笑)
資本金というお金が、金庫に鎮座していることのほうが、変なのです。
「利益」にとらわれすぎない
最後に、「利益」と「儲け」について。
今まで書いてきたように、「利益」は計算上の差額。
実態はありません。
でも「儲け」というと、頭にこれ↓が浮かびます。
私は関西出身ではありませんが、関西の方は「利益でまっか?」なんて言いません。
「儲かりまっか?」ですよね。
いくら利益が出ていても、お金になっていなければ意味がありません。
お金を元に商売をして、出た儲けでさらに商売を進める。
これが商売をやる意味だと思います。
「儲ける」って言葉にいいイメージを持たない方もいますが、儲けることは大切なことだと思います。
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